2020/06/13 2020/06/23

それでもCourseraをはじめる3つの動機

アクセス: 1357

コメント: 0

みなさんは、機械学習やディープラーニングの継続学習をどのように進めていますか？日進月歩で動きの速いAIの世界では、ちょっと気を抜くと主流の技術やアルゴリズムが交代していたりして、すぐ置いてきぼりになってしまいますよね。<br />
 <br />
　最新技術を学ぶには、その分野の専門家による対面の講義やセミナーを聴講するのがベストです。でも、昨今の情勢では、対面を前提にした学習では計画的に進めるのがちょっと難しいかも知れません。その点、オンライン授業では、自宅でも自分のペースで学習を進めることができます。AIのオンライン授業はいくつもありますが、今回是非ご紹介したいのは世界的にも有名なCoursera（コーセラ）です。<br />
 
<h1>Courseraとは？</h1>
　Coursera（コーセラ）は、スタンフォード大学が始めた、無料のオンライン教育サービス(MOOC: Massive Open Online Course)です。2012年に設立され、2019年末時点でユーザ数は4,700万人です。<br />
 
<div style="text-align:center;">図1　Couseraトップ画面（[1]より抜粋）<br /><img height="454" src="/p/kvbd6szib693tbepx7er-297461f8.jpg" style="width:920px;height:454px;" width="920" alt="kvbd6szib693tbepx7er-297461f8.jpg" /><div style="text-align:left;"> </div>

<h2 style="text-align:left;">Withコロナで人気急上昇 </h2>

<div style="text-align:left;">　図2は、全世界でのCourseraのトレンドを表したものです。2020年2～3月から急上昇しているのが見て取れます。急上昇の要因は、COVID-19感染拡大によりオンライン授業や在宅勤務が世界的に広がったのと、COVID-19向け無料プログラムの存在によるものかもしれません。</div>
 <br />
図2　Cousera 2年間のトレンド <br /><img height="577" src="/p/p56k6urpugx92vm8th4h-90858d41.png" style="width:400px;height:316px;" width="730" alt="p56k6urpugx92vm8th4h-90858d41.png" /><div style="text-align:left;"> </div>
</div>

<h1>それでもCourseraをはじめる3つの動機</h1>
　Courseraの中でも有名な「Machine Learning（機械学習）コース」[2]を紹介します。筆者のまわりの人たちには根強い人気があり、受講した人はおしなべて絶賛しています。日本語の教材がいろいろある中、（字幕はついているにしても）わざわざ英語の教材をやるのはハードルが高いのは事実ですが、このハードルを乗り越えてコースを完了した人たちの動機を聞いてみると、次の共通点が浮かびあがってきます。

<ol><li>基礎から学べる一流のカリキュラム</li>
	<li>JDLA E資格の対策にも使える</li>
	<li>最新技術へのキャッチアップ</li>
</ol>
ここでは、この３つの動機について、順に説明してゆきます。<br />
 
<div style="text-align:center;">図3　Cousera機械学習（[2]より抜粋）</div>
<img height="452" src="/p/dbxgapch7prz7jzyj9uh-170b2b8b.jpg" style="width:920px;height:452px;" width="920" alt="dbxgapch7prz7jzyj9uh-170b2b8b.jpg" /><p> </p>

<h1>視点1. 基礎から学べる一流のカリキュラム</h1>
　講義は11週、全部で18のコマからなります。機械学習の基礎、ニューラルネットワークの基礎から、異常検知やレコメンデーションシステムといった応用まで、幅広い分野を効率的に学ぶことができます。スタンフォード大学の一流のカリキュラムで基礎を学べるのが魅力です。

<div> 
<table border="1" cellpadding="0" cellspacing="0" style="width:750px;"><caption>表1　Coursera機械学習のカリキュラム</caption>
	<tbody><tr><td style="width:35px;">週</td>
			<td style="width:50px;">講義</td>
			<td style="width:189px;">内容</td>
			<td style="width:292px;">キーワード</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">1</td>
			<td style="width:50px;">1</td>
			<td style="width:189px;">Introduction</td>
			<td style="width:292px;">機械学習の定義、教師付き学習／教師無し学習、FAQなどコースの使い方</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">1</td>
			<td style="width:50px;">2</td>
			<td style="width:189px;">Linear Regression with One Variable</td>
			<td style="width:292px;">モデル、コスト関数、平均二乗誤差</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">1</td>
			<td style="width:50px;">3</td>
			<td style="width:189px;">Linear Algebra Review</td>
			<td style="width:292px;">線形代数</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">2</td>
			<td style="width:50px;">4</td>
			<td style="width:189px;">Linear Regression with Multiple Variables</td>
			<td style="width:292px;">重回帰、特徴量のスケーリング（Feature Scaling）、多項式回帰、正規方程式(Normal Equation)</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">2</td>
			<td style="width:50px;">5</td>
			<td style="width:189px;">Octave/Matlab Tutorial</td>
			<td style="width:292px;">Octave/Matlabチュートリアル、ベクトル化</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">3</td>
			<td style="width:50px;">6</td>
			<td style="width:189px;">Logistic Regression</td>
			<td style="width:292px;">分類、ロジスティック回帰</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">3</td>
			<td style="width:50px;">7</td>
			<td style="width:189px;">Regularization</td>
			<td style="width:292px;">過学習、バイアス、バリアンス、正則化</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">4</td>
			<td style="width:50px;">8</td>
			<td style="width:189px;">Neural Networks: Representation</td>
			<td style="width:292px;">ニューラルネットワーク、ニューロン、隠れ層、フォワードプロパゲーション、多値分類</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">5</td>
			<td style="width:50px;">9</td>
			<td style="width:189px;">Neural Networks:</td>
			<td style="width:292px;">誤差逆伝播 (バックプロパゲーション)、勾配チェック（Gradient Checking）、ランダム初期化（Random Initialization）</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">6</td>
			<td style="width:50px;">10</td>
			<td style="width:189px;">Advice for Applying Machine Learning</td>
			<td style="width:292px;">データ分割、交差検証、バイアス、バリアンス、正則化、学習曲線</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">6</td>
			<td style="width:50px;">11</td>
			<td style="width:189px;">Machine Learning System Design</td>
			<td style="width:292px;">スパム分類問題、エラー分析、不均衡データ(Skewed Data)、精度(Accuracy)、適合率(Precision)、再現率(Recall)、F値、機械学習のデータ</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">7</td>
			<td style="width:50px;">12</td>
			<td style="width:189px;">Support Vector Machines</td>
			<td style="width:292px;">SVM、カーネル、ガウシアンカーネル</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">8</td>
			<td style="width:50px;">13</td>
			<td style="width:189px;">Unsupervised Learning</td>
			<td style="width:292px;">クラスタリング、K-means</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">8</td>
			<td style="width:50px;">14</td>
			<td style="width:189px;">Dimensionality Reduction</td>
			<td style="width:292px;">次元削減、主成分分析(PCA)</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">9</td>
			<td style="width:50px;">15</td>
			<td style="width:189px;">Anomaly Detection</td>
			<td style="width:292px;">異常検知、ガウス分布(正規分布)、多変量ガウス分布</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">9</td>
			<td style="width:50px;">16</td>
			<td style="width:189px;">Recommender Systems</td>
			<td style="width:292px;">レコメンデーションシステム、コンテントベース、協調フィルタリング(Collaborative Filtering)、平均正規化(Mean Normalization)</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">10</td>
			<td style="width:50px;">17</td>
			<td style="width:189px;">Large Scale Machine Learning</td>
			<td style="width:292px;">確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent)、ミニバッチ勾配降下法(Mini-Batch Gradient Descent)、オンライン学習、MapReduce、データ並列化</td>
		</tr><tr><td style="width:35px;">11</td>
			<td style="width:50px;">18</td>
			<td style="width:189px;">Application Example: Photo OCR</td>
			<td style="width:292px;">OCR、パイプライン、スライディングウィンドウ(Sliding Windows)、天井分析(Ceiling Analysis)</td>
		</tr></tbody></table>
 <br />
筆者の場合は、講義7のバイアスとバリアンスの説明がとてもよかったです。これで正則化というものがやっと腹に落ちました。<br />
 <br />
 
<h1>視点2. JDLA E資格の対策にも使える</h1>
　標準としてはコースには11週間、標準学習54時間と言われていますが、もうちょっと時間がかかるイメージです。筆者の場合、3月初旬にJDLA E資格があったので、基礎力をしっかりつけようと思い年末から「Machine Learning（機械学習）」のコースを思い立って受講しました。平日の通勤時間に動画を見つつ、土日のまとまった時間を使って時に出来る限り進めました。ちょっと前倒しに進めましたが、結局9週間ほどかかり、終了したのはE資格の前日でした。<br />
 <br />
　Courseraのコース全般的にそうなのですが、一方的に講義を聞くだけでなく、課題やミニテスト、プログラムの成績が一定以上でないと、先に進めないような作りになっています。課題やミニテスト、プログラムの宿題については、最初のうちは簡単ですが、回を追うごとに難しくなっていきます。そのため、テキストを何回も見返したり、動画を見直したりしないと解けないようになっています。<br />
 <br />
　何と言っても素晴らしいのは、毎週のプログラミング課題の提出が義務付けられているという点です。プログラミングの宿題は全部で8回あります。結構手ごたえがあるので、挫折しそうになるのですが、宿題ができないと先に進めないので強力なモチベーションになります。<br />
 <br />
　宿題は、こんな感じでプログラムの概要が与えられており、” YOUR CODE HERE”の箇所に数行のコードを埋めるようになっています。ここらへんが、E資格のプログラミング問題に似ており、その場で考える練習になりました。<br />
 </div>

<pre>
<code>function J = computeCost(X, y, theta)
%COMPUTECOST Compute cost for linear regression
%   J = COMPUTECOST(X, y, theta) computes the cost of using theta as the
%   parameter for linear regression to fit the data points in X and y

% Initialize some useful values
m = length(y); % number of training examples

% You need to return the following variables correctly 
J = 0;

% ====================== YOUR CODE HERE ======================
% Instructions: Compute the cost of a particular choice of theta
%               You should set J to the cost.
% =============================================================

End
</code></pre>
　なお、利用するプログラミング言語はOctaveで、Matlabの無償版です。Pythonとシンタックスも類似しており、特に困る点はありませんでした。高校レベルの数学、プログラミングが出来れば前提知識としては十分だと思います。<br />
 
<h1>視点3. 最新技術へのキャッチアップ</h1>
　「機械学習」の講師は、AI業界で有名なAndrew Ng先生です。Andrew先生の講義は、言葉の端々にAIに対する愛情や意欲が感じられます。内容も本当にわかりやすく、特に数式の意味の説明の仕方がとても上手です。講義は、数式をシンプルにしたところから、順序立てて数式に項を追加してゆくスタイルで、一歩一歩理解を進めることができます。<br />
 <br />
　筆者の場合、ニューラルネットワークや、誤差逆伝播の仕組みなどは、一般的に次元が高くて理解しにくかったのですが、このスタイルで理解が進み、腹落ちしました。<br />
 <br />
　Andrew Ng先生の語り口はとてもマイルドで、英語の発音も明瞭なので日本人にもわかりやすいと思います。興味がある方は、下記をご覧ください。<br />
 <br /><a href="https://www.youtube.com/watch?v=qeHZOdmJvFU">https://www.youtube.com/watch?v=qeHZOdmJvFU</a><br /><br />
　機械学習、ディープラーニングの技術情報のほとんどは英語です。機械学習の概念を一から英語で学ぶことで、最新技術へのキャッチアップが格段に向上することができます。筆者の場合、Courseraを受講してから、気のせいか論文を読むのに少し抵抗感がなくなった気がします。<br />
 <br />
　Courseraには、データサイエンス系のコースが多数そろっています。「機械学習」を終えたあとは、日本語ではなかなか知識が得られない最先端のコースに英語で挑戦してみませんか？<br />
 
<h1>おわりに</h1>
　Courseraの魅力について解説してきましたが、如何でしたでしょうか？Andrew　Ng先生講師の「機械学習」は英語であることや、プログラミング言語としてOctaveを使っているなどの難点はありますが、それでもお勧めしたいポイントについて３つの視点から述べてきました。<br />
 <br />
　コースを終えたら、週刊ニュースレターThe Batch [3]を購読するのもよいかもしれません。The Batchは、毎週、重要なAIのイベント、最新の論文、展望などを、Andrew先生が精選して読みやすくキュレーションされたレポートで紹介したものです。こちらも、英語で機械学習を学んでみたい方には、是非お勧めしたいと思います。<br />
 
<h1>参考文献</h1>
[1] Coursera. (<a href="https://www.coursera.org/">https://www.coursera.org/</a>)<br />
[2] Coursera 機械学習. (<a href="https://www.coursera.org/learn/machine-learning/home/welcome">https://ja.coursera.org/learn/machine-learning</a>)<br />
[3] The Batch. (<a href="https://www.deeplearning.ai/thebatch/">https://www.deeplearning.ai/thebatch/</a>)<br />

それでもCourseraをはじめる3つの動機

人気記事ランキング

YOLOv5 登場！このプロ…

XGBoost（GBDT）とランダ…

深層学習はシステム1から…

PyTorchの躍進を紐解く３…

勾配法と学習率

いいね！ランキング

深層学習はシステム1からシステム2へ

XGBoost（GBDT）とランダムフォレストから…

ディープラーニングを学び始めた方へ　東…

なぜZoomは40分で切れるのか？

論文要約

ユーザーランキング

タグランキング

深層学習

AI

deeplearning

ディープラーニング

Transformer