2020/08/28 2020/08/29

AIや機械学習のスキルとして数学は必要なの？

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<img height="613" src="/p/zwmogukvkwge7xetd2a3-215226b7.jpg" style="width:920px;height:613px;" width="920" alt="zwmogukvkwge7xetd2a3-215226b7.jpg" />前回の記事でDeep Learningのフレームワーク「Keras」をご紹介しました。早速使ってみた方は、高精度のAIモデルがあっさりと出来上がってしまうので、びっくりなさっているかも知れません。機械学習の知識、特に数学を理解していなくてもKerasを使えばプログラムは動いて答えを出してくれます。そこでふと、疑問が湧いてきます。「機械学習のスキルとして数学は必要なの？」これについて、私の考えを個人レベルと社会レベルに分けてご紹介したいと思います。

１、個人のスキルアップに数学は必要？

機械学習の学習を進めて行く上で、大きく立ちはだかる壁は恐らく「数学」だと思います。「理系・文系」という言葉がありますが、大学での専門を考える際に、学問への興味よりも、数学が必要かどうかで決めてしまう傾向もあると感じてます。それほど数学は荷が重いと感じる方が多いのかも知れません。できれば数学に触りたくないと初めは思うかも知れませんが、でもそれは貴重なチャンスを失うことになると思います。AIや機械学習は一過性のトレンドではありません。これからも長期に渡り話題に登ることでしょう。AIが人間の能力を完全に超える日がいつ来るかは専門家でも意見が割れてますので、明確な答えはありません。しかし、ここ数年の技術の発展を見ていると、１０年後には世の中が変わってしまっているだろうと感じることも多いです。その重要な部分は「数学」で記述されています。「数学」が理解できれば、過去のAIモデル、現在のAIモデルの違いが正確に理解できます。すると次に出てくる未来のAIモデルの方向性もなんとなく予測できるようになります。また既存のAIモデルも、同じタスクに対して多様なモデルが提案されていることがあります。そういった場合でも、モデル間の相違点を理解でき、より良い選択ができるようになります。以上のように、数学を理解できればAIモデルに関する「土地勘」が身につくわけです。個々のAIモデルにはCNNとかLSTMとか名前が付いてますのでそれを見ればモデルが違うことはわかりますが、その特徴を正確に理解するためにはやはり数学を使うことがベストだと思います。また、皆様の長期的なキャリアプランにも数学はフィットすると思います。数学は科学の基礎的な記述方法ですので、何１０年経っても変わりません。現在の最新Deep Learningのモデルが１０年後も使われている保証はありませんが、１０年後のAIモデルもやはり数学で記述されていることは間違いないでしょう。数学は変化の激しい時代にも安心して時間を投資できるスキルであると考えられます。会社の寿命より人間の寿命の方が長い世の中になりました。そのスキルが長く使えるかどうかは大事なポイントとなりますね。

2、社会や国家にとって数学は必要か？

ここでは個人を超えて、社会や国家レベルで個人が数学を学習することの意味を考えてみたいと思います。限られた紙面で論ずるには大きなテーマですが、機械学習の訓練と同様に、過去の事例から学んでみたいと思います。2008年夏と言えばそれほど昔ではありません。このとき米国発の金融危機が発生しました。いわゆる「リーマン・ショック」です。名前にありますように投資銀行リーマン・ブラザーズが大方の予想を裏切り経営破綻。その衝撃は一気に世界へ波及しました。その原因は既に詳細に調査されており、ここでは詳しく立ち入りませんが、いくつもの金融機関が過大なリスクを取っていたことは大方コンセンサスが取れていると思います。各金融機関ともリスク管理用の数理モデルを持ってましたし、リスクは正確に計算されており、管理されているはずでした。しかし実態はそうではなかったようです。それらのモデルは高度な数学に基づいており、一部の専門家以外には理解不能だったようです。私はそれらのモデルは完全に「ブラックボックス」になってしまっていたと推測してます。こうなってしまってはもう誰もモデルの運用やリスク管理の実態に意見を述べることはできなくなってしまいます。リスク管理は形骸化し、結果的に金融危機を招いてしまいました。金融の数理モデルもやはり数学無しでは理解できないものです。「ブラックボックス」となったモデルは決して社会や国家にとって良いものではありません。「リーマン・ショック」はその貴重な教訓です。数学の基礎力はAIモデル理解への第一歩です。社会で稼働するAIモデルを理解することは、「モデルのブラックボックス」を防ぎ、AIモデルの健全な運用を可能とするでしょう。そう遠くない将来、私たちは病気の診断や裁判の判決、試験の合否などもAIに任せることになるかも知れません。そのときに社会や国家が健全にAIモデルを運用できるよう、私たちも数学の基礎を身につけて、それらを理解し、「ブラックボックス」ではないAIと共存していきたいものですね。 
お付き合いありがとうございました。みなさんの数学の学習や、AI・機械学習の理解に少しでも役立てば幸いです。

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